現代の『火の鳥』になりうるか?壮大なスケールの生命賛歌『アニメ:不滅のあなたへ』の見所紹介

タチバナ

アニメ「不滅のあなたへ」がとても面白いので、感想や見所をご紹介したいと思います!

『不滅のあなたへ』とは2021年4月よりNHKで放送されているTVアニメです。世界的ミュージシャン、宇多田ヒカルさんが主題歌(PINK BLOODを担当したことでも話題になりましたね!原作は週刊少年マガジンで連載中の大今良時さんによる漫画となっています。

NHKで全20話と近年のアニメには珍しくガッツリ枠をとっているので、深堀りに期待できそうな感じ。

そんな本作の主人公は不老不死の存在、フシ。
最初は地球に投げ入れられた球でしかなかった彼が、あらゆるものや人々の姿を写し取り、数々の出会いと別れを繰り返しながら悠久の時を生きる姿が描かれています。

目次

『不滅のあなたへ』の見所1 ディティール豊かな関係性の掘り下げ


あらすじをざっくり要約すると、難しい、あるいは説教臭いと敬遠されるかもしれません。生命の大切や生きる事の過酷さを説くアニメというと、確かに偏見を抱く向きもありそうです。
『不滅のあなたへ』が哲学的なテーマを孕んでいるのは事実ですが、決して敷居が高いアニメではないのはまず最初に言及したいです。

象徴的なのが第一話、これはこの話のみで完結している全ての発端となるエピソードです。

雪深い廃村にたった一人で暮らす少年と、彼にジョアンと名付けられた狼(正体はフシ)を軸に話が進行するのですが、派手な演出に頼らず一人と一匹の関係性をじっくり掘り下げています。

ストイックに徹した作りのヒューマンドラマで、たった30分とは思えない密度に大満足です。

『不滅のあなたへ』の見所2 無機質無表情なフシの変化


第二に挙げたい見所は、序盤は無機質無表情、感情がほぼなかったフシの変化です。

作中にて、フシは様々な人と出会いと別れを繰り返します。

名もなき少年、マーチ、ピオラン、グーグー……ジョアンからは旅の目的と未知への憧れを継ぎ、マーチには母性を教えられ、ピオランとの旅路で慈しみを知ります。

最初は何もない空白の状態だったフシが、辛い逆境を生き抜いた人々からかけがえのない心をもたらされ、どんどん表情豊かに変化していくのが感動的でした。

序盤から見守ってきた視聴者は、なおさら彼の成長が感慨深いのではないでしょうか。

『不滅のあなたへ』の見所3 祖先の想いが交錯するクロニクル


第三に挙げたい見所は、大河的ともいえる作中の時間経過です。原作ではフシは永遠に老いず有休を生きます。

最初は数年、次は数十年数百年、さらに数千年数万年……その名のとおり、フシは寿命を持たず彷徨い続けるさだめです。しかし彼の周りの人々は容赦なく老いて代替わりしていきます。どんなに好きな相手とも死に別れは不可避、絶対の孤独を運命付けられたフシ。

しかし数十年数百年が経過すれば、彼が愛し憎んだキャラクターたちの子孫と思いがけぬ場所で旅路が交錯します。

二ナンナ編の悪役として立ち回ったハヤセが良い例で、原作では彼女の子孫たちが何世代にもわたって登場し、その都度フシと独自の関係性を築いていきます。

ある時は片思いされ、ある時は崇拝され、ある時は腐れ縁の友誼を結ぶ。

時代が移り変われば必然フシへの見方や人々の在り方も変わりますが、ハヤセの子孫たちはこれを大変わかりやすく代弁していました。

『不滅のあなたへ』と手塚治虫の大作、『火の鳥』の共通点


放映当時から『不滅のあなたへ』と漫画の神様手塚治虫のライフワーク、『火の鳥』の類似点を指摘する声は多くありました。試しにSNSを検索してみればわかりますが、『不滅のあなたへ』から受ける印象は、『火の鳥』ととても近しいのです。

原作のamazonレビューでも同意見の読者が多く存在します。

『火の鳥』は不老不死の聖なる存在・火の鳥を巡り、過去・現在・未来と壮大なスケールで展開されるクロニクル。

永遠を命を得て旅する中で、人類の弱さや愚かさや醜さ、あるいは崇高さをを神の視点で俯瞰し、時に救済をもたらす火の鳥の在り方はフシによく似ています。

相違点があるとすれば、火の鳥が終始一貫として神の視点から見ているのに対し、フシは物語の進行に伴い人間の視点に近付いていくことでしょうか。

より人に近い姿をとっているため、その感情の機微を取り込みやすいのかもしれません。

『不滅のあなたへ』の総合評価、どんな人におすすめ?

『不滅のあなたへ』はずばり、『火の鳥』が好きな方におすすめです。個人的な意見ですが、『不滅のあなたへ』は現代版にアップグレードされた『火の鳥』とも解釈できます。そこには漫画の神様手塚治虫へのリスペクトがこめられていました。

生とは、死とは。命とは、人生とは……。
『不滅のあなたへ』で語られるテーマは極めて普遍的なもので、読者の誰もが共感せざるをえないのではないでしょうか。

大今良時ベースの絵は少し粗いタッチに感じますが、キャラクターのリアルな表情やフシの変身シーン、戦闘描写の細密さはとても見ごたえあります。アニメではここに素晴らしい音楽や生き生きした動き、声優の熱演が加わって何倍も見ごたえを増していました。

反対におすすめしないのは、キャラクターが死ぬのに耐えられない方です。
『不滅のあなたへ』はストーリーの性質上、どんどん人が退場していきます。第一話の少年しかり、その後も原作では2・3巻、アニメでは4・5話ペースで主要キャラが死亡するので、思い入れある登場人物に死なれるのが嫌なら避けた方が無難かもしれません。

ただ死んだキャラクターの想いや願いは必ず誰かに受け継がれるので、全体の印象としては世代交代に近いです。

どう生きたかを語るにはどう死んだかの描写が外せません。
『不滅のあなたへ』はキャラクターの死に様まで描ききって初めて完成する作品なので、ぜひ最後まで見届けてほしいです。

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