『響け!ユーフォニアム』のスピンオフ作品『リズと青い鳥』について

どうもタチバナです。

今回ご紹介するのは、2018年4月に劇場公開となった京都アニメーションが贈る『リズと青い鳥』。

TVアニメ「響け!ユーフォニアム」の完全新作劇場版として、TV版ではフォーカスの当たらなかった鎧塚みぞれと傘木希美の2人の少女が織り成す物語が描かれました。
作品を作る上で「少女たちのため息を描く」ことをテーマにしたという山田尚子監督のこだわりが感じられる90分の映画作品となっています。

目次

リズと青い鳥ってどんなアニメ?

“ずっとずっと、一緒だと思っていた。”

高校生活最後の吹奏楽コンクールに挑むオーボエ奏者の鎧塚みぞれとフルート担当の傘木希美。中学時代、ひとりぼっちだったみぞれにとって声をかけてくれた希美は世界そのもの。一度退部した希美と、いつか別れがくることを恐れ続けるみぞれは、童話「リズと青い鳥」に自分たちと重ねながら日々を過ごしていく。

テレビシリーズは、吹奏楽部全体を描く群像劇でしたが、この「リズと青い鳥」では“個”にぐっと寄っていく作品なので、繊細な心の葛藤など、より深い心理描写が映し出されており、娯楽的なスケールの大きな作品とは違い、腫れ物に触れるかのように、淡く優しく描き出された物語になっています。

舞台は「響け!ユーフォニアム」とまったく同じ「北宇治高等学校吹奏楽部」で、鎧塚みぞれと傘木希美にフォーカスを当てた作品ですが、しっかりとテレビシリーズでお馴染みの面々も登場してくるので、ユーフォの新作を見られているという感覚があり、前作からのファンも楽しく心地よく見ることができます。

また、この作品は「響け!ユーフォニアム」の番外編であり続編でもあるので、テレビシリーズを予め試聴していないとおすすめはできません。なので、この作品を見る前にテレビシリーズを試聴しておきましょう。

キャラクター&声優紹介

鎧塚みぞれ


本作の主人公で高校3年生。吹奏楽部ではオーボエを担当。市内の強豪・南中学校吹奏楽部出身でトップクラスの演奏技術を持っている。希美の存在が彼女の全てであり、その他のことに興味を向けることがない。

CV:種崎敦美
2012年デビューの若手女性声優。「残響のテロル」の三島リサ役や、「魔法使いの嫁」の羽鳥チセ役、「ブレンド・S」の天野美雨役などが有名。

傘木希美


本作の主人公で高校3年生。吹奏楽部ではフルートを担当。みぞれと同じく南中学校吹奏楽部出身。1年生のときに一度退部したものの、2年生の夏に復帰した。高い演奏技術と明るい性格で、後輩からも慕われている。

CV:東山奈央
2010年デビューのアニソンなどでも有名な人気若手声優。「きんいろモザイク」の九条カレン役や、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の由比ヶ浜結衣役、「マクロスΔ」のレイナ・プラウラー役、「ゆるキャン△」の志摩リン役などが有名。

中川夏紀


3年生で副部長。ユーフォニアム担当。高校から吹奏楽を始めた。中学時代、輪の中心にいる希美に憧れを持っていた。

CV:藤村鼓乃美
名前のついたキャラクターを務めるのは本作が初めての若手女性声優。

吉川優子


3年生で部長。トランペット担当。2年前の部員退部騒動から、みぞれを気にかけている。

CV:山岡ゆり
本人も中学、高校と6年間吹奏楽部でトランペットに打ち込んだ若手女性声優。「SHIROBAKO」の矢野エリカ役や、「境界の彼方」の新堂愛役、「ヘボット!」のペケット役などが有名。

リズ


童話「リズと青い鳥」の登場人物。両親を亡くし、湖の近くの家でひとり暮らしている。ある日、倒れている少女を助け、一緒に暮らすようになる。

CV:本田望結
CMやドラマなどに出演している子役タレント。アニメ作品への出演は今回が初となる。


魅力や見所

2人の関係性

ずっと一緒だった2人の少女が、いくつかのきっかけやすれ違いで変わり始める様子が非常に丁寧に描かれています。最近のアニメでよくある、状況や思っていることを全てセリフで説明してしまうのではなく、多くを語らずに雰囲気や表情などだけで、2人の微妙な距離感や想いを表わしていて本当に素晴らしい。

ストーリーの軸をみぞれと希美の2人に絞って余計な一切は省かれているので、焦点の絞りが利いていてまさに2人の物語です。

そして、無口で気弱なみぞれと、元気で明るい希美がお互いのことを想って本音で話す様々な気持ちがとても濃厚で優しくて胸を打たれました。

好きという感情

この2人の関係性を一言で百合と表現してしまうのはナンセンス。

ただの好きでも「高校3年生」という多感な時期の好きは、友情、憧れ、親しみ、安心など、多彩な感情が入り混じっていて、そんな年頃の少女が抱く繊細で複雑な感情を、アニメでは過去に見たことがないレベルで丁寧に描かれています。

日常をドラマティックに描く作画

テレビシリーズ版とはキャラクターデザインや作画のタッチが異なっています。
この作品独特の柔らかなタッチと透明感のある色彩が、静かな作風に絶妙にマッチしていました。

2人の間にある空気感や、教室に差し込む光、絵本の世界に、演奏シーン。彼女たちを囲む柔らかなオーラが上手く表現されていて、ケバケバしくならないように卓越した色のバランス感覚で心地よく映し出されていました。
カット割りにしてもセンスの光る演出が冴え渡っていて、2人の足元のカットだったり、風景のカットだったりが余韻を運んでくれて素晴らしかったです。

日常の音

心の機微などを細かく描いた作品であるがゆえに、全体的に静かな物語となっているので、この音がとても大切なんです。
2人の沈黙を音楽にしたり、廊下を歩く足音、楽器を組み立てる音、冷水器の音、キャップを開ける音など色んな生活音を丁寧に拾い上げています。そこにはまさに学校の音がありました。

また、音楽の世界で「不協和音」という言葉があるように、僅かなズレが全体の調和を乱します。そんな不協和音で2人の心のズレを表現したり、心の葛藤を表現したりと吹奏楽ならではの手法も楽しめます。

演奏シーン

「響け!ユーフォニアム」でもそうでしたが、演奏シーンの作画はかなり気合いが入っていて圧巻の見応えがありました。特に、みぞれと希美のオーボエとフルートの掛け合いのシーンは必見。

演奏に至るまでにドラマが描かれているので、やはり演奏シーンはグッと来るものがありました。

リズと青い鳥を見るには


まだ劇場公開中の作品なので、動画配信は現在ありません。
おそらく、2018年の秋以降になると思われます。

まとめ

主人公2人の微妙な距離感と友情の変化を、音楽や演出、画面づくりなどを駆使して繊細に表現した青春ストーリーとなっています。
エンターテイメント作品のように盛り上がる展開などが待っているわけではありませんが、90分息を殺して画面に釘付けになるほど夢中になれる作品です。

思春期の少年少女の心の機微を描いたような青春作品が好きな人には全力でおすすめします。

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