「すずめの戸締まり」感想/評価 震災文学として後世に語り継がれるべき作品!!

タチバナ

新海誠監督の最新作である「すずめの戸締まり」を劇場で視聴してきました。
ネタバレありで個人的な感想、評価、レビューを書いていますので、まだ未視聴の方は注意してください

公開初日に早速観に行ってきましたが、、、相も変わらず余韻がスゴイ。
“地震”という非常にデリケートで重いテーマではあったけど、新海誠監督が伝えたかったメッセージがとてもわかり易くてシンプル。

来場者全員に配られたパンフレットに書いてあった新海誠監督の言葉スズメの旅が終わり、観客が映画館から出た時に、その生がすこしだけでも昂揚するといい。そういう映画を作りたい。がまさにこの作品にはありました。

ある特定の地域に住んでいた方々にとって、どんな映画体験になったのか、救いをもたらしてくれるのかは自分にはわからないけれど、明日の活力になるような作品であったのではないかと思います。

相当な覚悟を持って世に送り出したであろう今作は、色んなことが起こりうる地震大国日本において、きっと後世に語り継がれる作品になったと思う。
・・・というのは言い過ぎかもしれないけど、震災文学としてこれほどファンタジーですんなりと観れる前向きな作品って中々ないのでは。

すずめの戸締まり 感想

とにかくテンポが良かったので、若干ゴリ押しな展開と勢いで押し切られた感は否めないけど、少女の成長と開放、そして日本と切っても切れない”地震”というものと向き合い、そこから未だ見ぬ明日への希望を見つけるまでの過程を描く現代風冒険譚としての仕上がりとメッセージ性は素晴らしかった。

話の軸となった「廃墟」にある「扉」から地震が引き起こされるという発想や、それを人知れず収めている「閉じ師」という存在が素晴らしい。
それらを上手く使って、忘れ去られていくその地の人々の儚い想いや思い出などを「お返しします」と救いながら、私達に「忘れてはならない」と訴えかけてきているような描写の数々。

ほんとに世界観の立ち上げ方と肉付けが上手いなぁと感心させられっぱなしで、ラストまであっという間でした。

日本列島をドンドン北上していくシナリオ進行で、絶対に向かうだろう地域が段々と絞られていく感触とひとつの日付に繋がっていく流れがとてもスリリングでした。
3.11の数字を見た時は鳥肌が止まらず心底怖くなり、色んな感情が揺れ動いてめちゃくちゃ泣けました。

タチバナ

なにより冒頭の伏線を回収する形でのクライマックスが最高!!

絶望の中で生きる強さを与えたのは自分自身。
誰かに与えられた言葉や想いではなく、12年間もがき苦しみ、それでも生きてきた自分自身の存在が生きることの尊さを教えてくれたラスト。
閉じ師として扉を締め、様々な人々の想いと向き合いながら自分自身の心とも向き合いながら。
旅を通して幾度となくこれを経験し成長したスズメが語る、幼少期の自分への応援メッセージ。

「今はどんなに悲しくてもね、スズメはこの先、ちゃんと大きくなるの。」
「だから、心配しないで。未来なんて怖くない。」
「私はね、スズメの明日」

ほんと胸が熱くなりました。感動とか悲しくて泣けるというものではなく、人間の本質的な部分に届くタイプの涙腺崩壊がこの作品にはありました。

こういう冒険譚の作品の好きなところって、キャラクターと共に旅をして、キャラクターと共に成長して、これまでと違う世界が見えてきてたまらなく愛おしくなるんです。
このすずめの戸締まりも例外なく、九州の田舎から飛び出したスズメと共に旅をして、再び帰ってきた地元はこれでまとは違って見えました。オープニングの通学風景と、エンディングの通学風景はまるで違う世界に見えてしまうんですよね。今住んでいる場所は自分の経験や見え方一つで別世界になる感じ。ラストの通学風景はほんとに美しくて愛おしくてたまりませんでした。

最後に

震災という重い題材をオリジナルアニメで表現し、重すぎず軽すぎずエンタメに振って、娯楽としての映画の立場から強烈なメッセージを届けるという至難の業をやり切られた制作陣、ひいては新海誠監督に敬意を払いたいです。

これほど心が震え、前を向ける作品に出逢えたことに感謝。
日本人が忘れかけている「今」観ておくべき作品だったのではないでしょうか。

過去現在未来をつなぐ、“戸締まり”の物語。
より一層、新海誠監督のファンになりました。

以上、「すずめの戸締まり 感想/評価」でした。

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